こんにちは。今回は、渡辺恭良さんの著書『休養学』を取り上げ、現代のビジネスパーソンにとって「戦略的な休養」がいかに重要であるかを掘り下げていきます。
私たちは日々、忙しさの波にのまれながら働いています。メール、会議、報告、締切……終わりなき業務の中で、疲れていても「まだやらなきゃ」「休むのは甘え」と自分に言い聞かせていませんか?
でも、本当にその働き方でパフォーマンスは上がっているのでしょうか?
――本書『休養学』は、こうした疑問に科学的にアプローチし、明快な答えをくれます。
「休養学」って何?
『休養学』は、医学博士・渡辺恭良さんが提唱する「休むことの科学」。単なる健康法やリラクゼーションの話ではありません。
これは、「脳と身体のパフォーマンスを高めるために、意図的かつ戦略的に休む」ための学問です。
著者は「疲労」の正体を医学的に解明し、脳と自律神経の働き、ホルモンのバランスなどから、どのように「効率的に休むか」を提示しています。
結論から言えば、「休養はスキル」であり、「意識的に学んで身につけるべき技術」なのです。
疲れの正体は「脳」が決めている
本書で繰り返し強調されるのが、「疲労とは、身体の問題というより“脳”が発している警報である」という点です。
● 疲れ=脳のブレーキ機能
たとえば、長時間PCの前に座って資料作りをしていると、肩や腰が疲れると同時に、思考力や判断力が鈍くなってきます。これは「脳が過活動によるオーバーヒート状態」になり、あなたの行動を制限しようとする自然な反応です。
この状態で無理を続けると、作業効率は落ち、ミスも増え、結果として「仕事が終わらない」悪循環に入ります。
つまり、「疲れていると感じたとき」には、すでに脳がブレーキを踏んでいる状態。そこから無理をするのは、車で言えばエンジンを焼き切るようなものなのです。
戦略的な「休み方」は学べる
日本人は「がんばること」を美徳とする傾向があります。しかし、今の時代に必要なのは、「いかに上手に休むか」という視点です。
● 休養は“感覚”ではなく“戦略”
「休む=怠け」ではなく、「休む=パフォーマンスを維持・回復する行動」だと再定義する必要があります。睡眠をとる、温泉に入る、趣味に没頭する……それらはただの“娯楽”ではなく、脳と身体を効率的に回復させる“投資行動”です。
● マイクロレスト(短時間休憩)の力
本書では、特に注目すべき休養法として「マイクロレスト」が紹介されます。
これは、1〜5分の深呼吸、10分の散歩、軽いストレッチなどを1日の中に積極的に組み込む休息方法。驚くべきことに、これだけで脳の疲労回復が促されるという研究結果があるのです。
特に、長時間座りっぱなしで仕事をしている人ほど、この“こまめな休養”を意識的に取り入れるだけで、集中力・判断力・創造力が回復し、結果として仕事の質が向上します。
自律神経を整えることで心も整う
本書では「自律神経」にも大きな焦点が当てられています。
● 自律神経のバランスが崩れると……
- 集中できない
- イライラする
- よく眠れない
- 気持ちが沈む
このような不調が起こります。忙しい現代人は、交感神経(戦う・緊張)優位の状態が続いていることが多く、リラックスを司る副交感神経が働きにくくなっているのです。
● 呼吸法や瞑想が有効
自律神経を整える方法として、深い腹式呼吸、瞑想、軽い運動(ヨガや散歩)、ぬるめの入浴などが効果的であると紹介されています。
こうしたシンプルな習慣でも、「意識的に継続すること」が重要です。
ビジネスにおける「休養戦略」とは?
休養は、もはや個人の健康管理だけの話ではありません。組織として、企業として、「休める環境づくり」「疲労をためないマネジメント」が求められています。
● 疲労は個人任せにしない
疲れている部下に「自己管理ができていない」と言って済ませるのではなく、リカバリーのための制度や文化を整備する必要があります。
たとえば:
- 仕事の合間に10分のマイクロブレイクを推奨
- ノー残業デーの徹底
- 有給取得率の向上
- リモートワークと出社のバランス管理
- メンタルチェックやカウンセリングの導入
など、組織ぐるみで「休む力」を支援する体制を取ることが、生産性向上や離職防止につながるのです。
「休むこと」は未来の自分への投資
あなたは、仕事を「がむしゃらに頑張るもの」と思っていませんか?
けれど、今の時代、それはもはや“昭和の根性論”にすぎません。
本当に成果を出している人たちは、必ずと言っていいほど「自分の状態管理」に長けています。自分を“燃え尽き”させず、最もよいパフォーマンスを出せる状態に整えること――それが現代の“ビジネススキル”なのです。
まとめ:あなたの「休み方」が仕事の結果を変える
『休養学』は、働き詰めの現代人に「休むことの大切さ」を科学的かつ実践的に教えてくれる名著です。
- 疲労は脳が発する危険信号
- 休養はスキルであり、学ぶべき技術
- 自律神経を整えることで心身を整える
- 組織も「休める文化」を育てるべき
仕事がうまくいかないとき、頑張ることよりも「どう休むか」に目を向けてみてください。
それが、あなた自身の可能性を最大限に引き出す第一歩になるはずです。
ぜひ一度、『休養学』を手にとってみてください。
休むことに罪悪感を感じていたあなたの意識が、きっと変わります。
📘 書籍情報
書名:休養学
著者:渡辺 恭良(わたなべ やすよし)
出版社:日本経済新聞出版
発売日:2022年9月
ISBN:978-4-532-35730-0
ページ数:256ページ
価格:1,760円(税込)
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