『きみのお金は誰のため』から学ぶ、お金とビジネスの本質

ビジネス

現代社会において「お金」は私たちの生活や仕事に密接に関わっています。ビジネスの目的が「利益を出すこと」である以上、「お金」は避けて通れないテーマです。しかし、私たちはお金のことを本当に理解しているでしょうか?

今回紹介する書籍『きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』は、そんな問いかけにストーリー形式で答えてくれる一冊です。難しい経済理論ではなく、主人公の少年が「ボス」と出会い、お金について学んでいく過程を通して、読者も一緒に「お金の本質」や「社会とのつながり」を再発見する構成になっています。

この記事では本書のエッセンスをビジネス視点から掘り下げ、「働くこと」「稼ぐこと」「社会とお金の関係」について考えていきます。


お金とは何か?──それは「信用」の証

本書の最大のテーマの一つが、「お金とは信用である」ということ。言い換えるなら、お金は社会の中で「この人はちゃんと価値を生み出した」という信頼の証明書なのです。

たとえば、会社員が月末に給料をもらうのは、「一ヶ月間ちゃんと働いて、会社に貢献した」という信頼があるからです。そのお金を使ってコンビニでお弁当を買えば、今度は「お金を払ってくれた人だから」とコンビニ店員は商品を提供する。すべてが「信用」に基づいて成り立っています。

ビジネスと信用の関係

ビジネスにおいても「信用=ブランド力」と言い換えることができます。どれだけ広告を打っても、どれだけ価格を下げても、信用がなければ商品は売れません。

また、取引先との関係、社内の人間関係、顧客とのつながりすべてにおいて、信用は“目に見えない資産”として機能します。そして、それが最終的に「売上=お金」として表れてくるのです。


「稼ぐ」ことは「奪う」ことではない

多くの人が、お金を稼ぐことにどこか後ろめたさを感じています。「お金にがめついと思われたくない」「あの人ばかり儲かっているのはずるい」などの感情は、日本人の文化的背景にも根差しているかもしれません。

しかし、本書では「稼ぐ=価値を社会に提供した結果」であると教えてくれます。つまり、適正な報酬を受け取ることは、他者からの感謝であり、貢献の証なのです。

正しい稼ぎ方=社会との共存

ビジネスの現場でも「顧客の問題を解決する」ことが第一です。商品が売れるのは「お金を払ってでも解決したい問題」があるからで、そこに価値提供が成立します。

だからこそ、正しい稼ぎ方は「奪う」ことではなく、「助ける」「支える」こと。つまり、社会の役に立つビジネスこそ、長く続くのです。


「会社は誰のために存在するのか?」

本書では「お金は誰のためにあるのか?」という問いに対して、「社会のため」であると答えています。同様に、企業という存在も「社会に価値を提供するためにある」と考えるべきです。

経済活動のゴールが「株主の利益」や「個人の成功」だけに偏ってしまうと、いずれ信用を失い、社会から支持されなくなります。

パーパス経営の重要性

近年注目されている「パーパス経営(存在意義を重視した経営)」はまさにこの思想に通じています。企業がなぜ存在するのか、誰のために働くのかという“根っこ”を明確にすることが、現代のビジネスにおいては非常に重要です。

たとえば、ユニクロのように「服を通じて世界中の人々の生活をより豊かにする」といった目的が明確な企業は、顧客・社員・社会から信頼されやすくなります。


お金は「回してこそ」意味がある

本書では「お金は使わないと意味がない」と繰り返し語られます。たとえ1億円持っていても、それをただ貯めているだけでは社会に何の価値も生みません。

投資と思いやりの共通点

たとえば、自分のために使うお金も「未来の自分への投資」となり得ますし、誰かのために使えば「他者への思いやり」にもなります。お金の使い方=生き方とも言えるのです。

ビジネスでも、社内への投資(教育、設備、人材育成など)や、社会貢献(CSR活動、地域支援など)は、一見“コスト”のように見えて、長期的には会社の信用と利益を生み出す“投資”になります。


お金を「目的」ではなく「手段」にする

本書が最も伝えたいメッセージは、お金を「目的化」してしまうことの危険性です。お金はあくまで「自分が何をしたいか」「どう生きたいか」を実現するためのツールであり、それ自体がゴールになってしまうと、人生もビジネスも空虚になってしまいます。

ビジネスの本質は「誰かのため」

優れた企業は、常に「顧客の課題解決」や「社会の問題解決」を目指しています。その結果として、利益や成長がついてくる。逆に、利益ばかりを追い求めたビジネスは、短期的にはうまくいっても、長期的には信用を失っていきます。


まとめ:お金を通して社会とつながるビジネスを

『きみのお金は誰のため』は、単なる経済やお金の入門書ではありません。お金という概念を通して、私たちがどのように社会と関わっているか、そしてその中で「働くこと」や「ビジネスをすること」の意味を問い直してくれる一冊です。

ビジネスの世界においても、「利益=社会貢献の証」という視点を持つことが、これからの時代に必要とされるマインドセットです。お金を単なる「儲け」や「報酬」と捉えるのではなく、「社会の信用を集め、循環させる手段」として使っていく──そんなビジネスこそが、これからの時代に必要とされていくはずです。

あなたのビジネスは、誰のために存在していますか?

📘 基本情報

タイトル:『きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』

著者:田内 学(たうち まなぶ)

  • 元ゴールドマン・サックス証券にて16年間トレーダーとして活躍後、金融教育家に転身

出版社:東洋経済新報社

発売日:2023年10月18日(書店発売日)/初版:2023年10月31日

版型・ページ数:四六判・並製・約250頁(247~250頁)

定価:1,650円(税込)

🎖️ 評価・受賞歴

Amazon和書総合ベストセラー1位(2023年10月8日・9日)

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