◆ はじめに 〜なぜ「パン屋」で「おにぎり」なのか?
パン屋さんに行ったらパンを買うのが当たり前。でもそこに「おにぎり」が置いてあったら、あなたはどう思いますか?
「なんでパン屋でおにぎり?」と驚くかもしれません。実はその違和感こそが、ビジネスにおける重要なヒントなんです。
柿内尚文さんの著書『パン屋ではおにぎりを売れ』(かんき出版)は、**「常識を疑い、想像以上の答えを導き出す思考法」**を提案する一冊です。
パンを売るのが当たり前と思い込んでいると、新しい発想は生まれません。しかし、視点を変え、「本当にお客さまが欲しいものは何か?」を考えることで、まったく新しい価値が提供できるようになります。
このブログでは、本書の内容をもとに、「どうすれば今のビジネスを進化させられるのか?」という視点で、わかりやすく解説していきます。
◆ 「お客さまは本当にパンを求めているのか?」という問い
「パン屋ではパンを売る」ーー一見当たり前のように思えます。でも、この本はその“当たり前”に疑問を投げかけています。
もしかしたらお客さまは、「パン」という商品そのものよりも、「簡単にお腹を満たせるランチ」を求めているのかもしれません。忙しいお昼時に、サクッと食べられるものなら、パンでもおにぎりでも良い。むしろごはん党の人には、おにぎりの方が魅力的かもしれない。
この発想の転換が、「パン屋でおにぎりを売る」という戦略に結びつくのです。
▼ 実際のビジネスに応用してみると?
- カメラメーカー → 「カメラを売る」ではなく「思い出を残す体験を売る」
- 美容室 → 「髪を切る」ではなく「自信と癒しを提供する」
- 塾 → 「勉強を教える」ではなく「目標達成と自己肯定感を支援する」
商品やサービスの“見た目”だけにとらわれてしまうと、本当の価値が見えなくなってしまいます。だからこそ、「顧客の本質的なニーズ」に着目する視点が大切なのです。
◆ ヒットの裏にあるのは「当たり前を疑う力」
著者の柿内さんは、編集者として数々のベストセラーを生み出してきた人物です。彼がヒット作に共通するものとして挙げているのが、
「普通はこうだよね」「常識ではこうだよね」という考え方を、あえて疑う力
です。
たとえば、最近では「一汁一菜のすすめ」(土井善晴著)というレシピ本がヒットしました。「料理はきちんと作らなきゃ」「品数が多い方がいい」という固定観念を壊し、「ご飯・汁物・漬物でも十分」という発想が多くの人に支持されました。
これも“当たり前”を見直した結果、共感が生まれた好例です。
◆ ビジネスに必要なのは「視点をズラす力」
本書では、「視点を変える」ことがどれほど重要か、さまざまな角度から解説されています。
■ 競合と同じことをしていても勝てない
競争が激しい今の時代、同じような商品、同じようなサービスでは、お客さまに選ばれません。価格競争に巻き込まれて、疲弊してしまうだけです。
そこで必要なのが、「ズラす」発想。
- 売れない商品→「誰に向けているか」をズラす
- 商品ラインナップ→「機能」ではなく「感情」に訴える
- 売る場所→「ネット」や「コラボ」など販売方法をズラす
「王道」ではなく「盲点」にビジネスチャンスが潜んでいることが多いのです。
◆ 「おにぎり発想」が成功につながる5つのポイント
1. 顧客視点に立つ
どんなビジネスでも、重要なのは「お客さまの立場で考える」ことです。提供している商品やサービスが、どんな“状況”や“感情”で求められているのかを観察しましょう。
2. 常識を疑う
「こうであるべき」「この業界では普通」といった考え方に縛られていませんか?そこに一度疑問を持ってみることが、革新の第一歩です。
3. ニーズではなく「課題」に注目
お客さまが言葉にするニーズの背後には、「解決してほしい問題(ペイン)」が隠れています。その“痛み”に応える商品は、長く選ばれます。
4. 「売るもの」ではなく「提供する価値」で考える
「この商品を売りたい」ではなく、「この価値を届けたい」と考えることで、手段が広がります。おにぎりも、そのひとつの手段に過ぎないのです。
5. 逆張りを恐れない
競合がしないことをあえてやる。ニッチでも、お客さまの強い支持を得られる市場は必ずあります。違うことをやる勇気が、ブランドを生み出します。
◆ 実際の企業事例に学ぶ「おにぎりを売る」成功例
● 無印良品
家具・日用品のイメージが強い無印ですが、近年は「食」や「家(MUJIの家)」など領域をどんどん広げています。大切なのは「無印らしい生活提案」であって、売っているモノそのものではありません。
● スターバックス
コーヒーを売っているようで、実は「くつろぎの空間」を提供しているスターバックス。自宅でも職場でもない「第3の場所」という発想が成功の鍵です。
● メルカリ
もともとはフリマアプリとしてスタートしましたが、現在では「いらないモノを手放す文化」「循環型社会の実現」など、より広い価値を提供しています。
◆ 今のあなたのビジネスを“おにぎり視点”で見直すには?
以下のチェックリストをもとに、ぜひあなたの仕事・ビジネスを振り返ってみてください。
✅ チェックリスト(セルフ診断)
- 自分の商品やサービスを「当たり前」と思っていないか?
- 顧客が本当に求めている“感情”や“状況”を理解しているか?
- 競合と明確に差別化できているか?
- 新しい視点を導入する余地はないか?
- 顧客の「悩み」「不便」「願望」に応えているか?
少しでも「ドキッ」とした項目があるなら、それは“伸びしろ”です。
◆ まとめ 〜視点を変えれば、答えはすぐそばにある
『パン屋ではおにぎりを売れ』が伝えているのは、単なる発想の面白さではありません。「視点を変えれば、今ある資源でも違う成果を生み出せる」という強いメッセージです。
今の時代に求められているのは、「賢さ」ではなく「柔軟さ」。答えは、いつも自分のすぐ近くにあります。それに気づけるかどうかが、成功するビジネスとそうでないビジネスを分けるのです。
あなたもぜひ一度、パンを売る手を止めて、**「おにぎりを売るとはどういうことか?」**を考えてみてください。その先に、あなたらしいビジネスのヒントが見えてくるはずです。
◆ 書籍情報
書名:パン屋ではおにぎりを売れ 想像以上の答えが見つかる思考法
著者:柿内 尚文
出版社:かんき出版
発売日:2020年6月24日
定価:1,650円(税込)
判型:四六判
頁数:272ページ
ISBN:978-4-7612-7499-3
ジャンル:ビジネス書
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