■ はじめに
「頑張っているのに評価されない」
「なんとなく成果が出たけど、再現できない」
「会議で意見を出しても、曖昧なまま終わってしまう」
こんな経験、ビジネスの現場で誰もが一度は味わったことがあるのではないでしょうか?
その原因、多くの場合「数値化」ができていないことにあります。
今回ご紹介するのは、識学社長・安藤広大さんの著書『数値化の鬼』。この本は、「できる人」はみんなやっている“たった一つの思考法=数値化”を、シンプルで実践的に教えてくれる一冊です。
この記事では本書のエッセンスを、ビジネス現場での活かし方とともに、わかりやすく解説していきます。
■ 「数値化」とは何か?──言葉でなく“数字”で語る
「頑張っています」
「忙しいです」
「それなりにやっています」
これらは一見して前向きな言葉に見えますが、実は非常に曖昧で、相手に何も伝わりません。
たとえば、あなたが上司だったとして、部下が「今月は営業、けっこう頑張りました!」と言ってきたらどう返しますか?
おそらく「そうなんだ」としか言えないでしょう。
でも、もしこう言われたらどうでしょう?
「今月は新規アポが30件、訪問20件、受注3件でした。受注率は先月より2%改善しました」
こう言われたら、「ああ、ちゃんと数字で見ているな」「どこが伸びているか分かりやすい」と感じるはずです。
このように、“感覚”ではなく“数字”で物事を捉え、説明するのが「数値化」です。
■ なぜ、数値化がビジネスに必須なのか?
数値化には、ビジネスにおける大きなメリットがあります。ここでは、特に重要な3つをご紹介します。
1. コミュニケーションがスムーズになる
曖昧な表現ではなく数字で話せば、上司・部下・同僚との認識ズレが減ります。
例:
- ×「進捗はまあまあ順調です」
- ○「進捗率は現在60%、残りの作業は4工程中2工程が未着手です」
数字があるだけで、相手も状況を正確に理解しやすくなります。
2. 問題の原因がはっきりする
数字で見れば、どこがボトルネックかが明確になります。
たとえば営業なら:
- アポ数が少ないのか
- アポから訪問の転換率が低いのか
- 訪問から受注の確率が低いのか
こうしたプロセスを「数値」で見れば、改善すべきポイントが一目瞭然です。
3. 再現性が生まれる
「なぜうまくいったのか?」「なぜ失敗したのか?」を分析するには数字が必要です。数字で振り返るからこそ、成功を再現できるのです。
■ 数値化は「才能」ではなく「習慣」である
本書の優れた点は、「数値化は特別な人だけができるスキルではない」と伝えていることです。
たとえば、「今日は生産的な1日だった」と感じたなら、「それはなぜか?どの業務を何件こなしたか?」と自分に問いかけてみましょう。
営業、企画、開発、人事、どの職種でも「何を」「どれだけ」「いつまでに」できたかを具体的な数字に落とし込めば、誰でも仕事の見える化ができます。
■ 実践編:仕事を数値化する5ステップ
では、実際に仕事を数値化するにはどうすればよいのでしょうか?本書で紹介されている5ステップを紹介します。
ステップ1:目標を決める
まず「何を達成したいのか?」を明確にします。
例:月に10件の契約を取る、クレームを半減させる、資料作成時間を2割削減する など。
ステップ2:現状を数値で把握する
現時点での数字を洗い出します。
例:現在の契約数は月5件、クレームは月20件、資料作成に1件あたり4時間かかっている…など。
ステップ3:ギャップを確認する
目標と現状の差を明らかにします。
→ 目標10件 vs 実績5件 → ギャップ=5件
ステップ4:改善策を考える
「どこを変えれば数字が伸びるか?」を分析し、改善策を考えます。
→ 訪問件数を2倍にする、提案資料をテンプレ化する、フォロー体制を強化する…など。
ステップ5:行動も数値で管理する
たとえば「提案回数を毎週10件」「週2回のロールプレイ実施」など、行動計画も数字で管理します。
■ 数値化が活きるビジネスシーン5選
ここでは、ビジネス現場で「数値化」が特に効果を発揮する場面を5つ紹介します。
① 営業活動
- アポイント数、商談数、受注率、売上単価、継続率…などすべてが数値化できる。
- だから改善しやすい。数字を追っていくことで、成果が出るポイントが明確になる。
② チームマネジメント
- 進捗管理、業務量、報連相の頻度などを可視化することで、働き方を改善できる。
- 感情ではなく、数字で評価することでフェアなマネジメントが可能になる。
③ プロジェクト進行
- スケジュール遅延や工数の過不足も、すべて数値で把握できる。
- 「体感ではもうすぐ終わる」ではなく「全体の作業のうち完了は65%」という客観的な数字が重要。
④ 採用活動
- 書類選考通過率、面接通過率、内定承諾率などを数値で追うことで、採用の質が上がる。
⑤ 自己成長
- 読書数、勉強時間、インプット回数、アウトプット回数を数字で見れば、自分の成長が見える化できる。
■ よくある誤解とその対処法
● 「数字ばかりでは、冷たい人間になるのでは?」
そんなことはありません。数値化とは「感情を捨てること」ではなく、「感情だけに頼らないこと」です。
数値化は、感情や思いを正しく伝えるための“翻訳機”のようなものです。
● 「自分の仕事は数字にできない」
本当にそうでしょうか?
たとえば「チームの雰囲気作り」という仕事も、「1on1面談の回数」「フィードバックの頻度」「朝礼の実施数」などに置き換えれば、十分数値化できます。
工夫次第で、どんな仕事も数字で見えるようになります。
■ 印象的な名言
最後に、本書の中でも特に心に残った言葉を紹介します。
「人は感情で動く。しかし、仕事は数字で考える。」
「数字を出せば、言い訳は減り、改善は始まる。」
この言葉は、まさに“できる人”が持つ思考そのものです。
■ まとめ:数値化は「仕事力の武器」になる
『数値化の鬼』を読んで分かったのは、成果を出す人は「数字で考える習慣」を持っているということ。
感覚ではなく、数字で行動を評価し、改善し続ける──
これこそが、再現性のある成功を作る“鬼の思考法”なのです。
数値化は、一朝一夕で身につくものではありません。しかし、「意識して数字に置き換える」だけで、少しずつ精度が上がっていきます。
ぜひ、今日からあなたの仕事にも「数値の視点」を取り入れてみてください。それが、ビジネスの成果を大きく変える第一歩になるはずです。
📘 書籍情報
書名:数値化の鬼 ── 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法
著者:安藤 広大
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2022年3月
定価:1,650円(税込)
判型:四六判 並製
ページ数:288ページ
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