「もっと働けば、もっと貯金ができる」
「老後に備えて、今は我慢の時」
──そんなふうに考えていませんか?
ビル・パーキンスの著書『DIE WITH ZERO(ダイ・ウィズ・ゼロ)』は、こうした現代人の常識に疑問を投げかけます。本書のメッセージはシンプルでありながら強烈です。
「お金を使わずに死ぬことは、人生の失敗である。」
本記事ではこの哲学をビジネスに活かす視点から解説し、どのように人生と仕事を豊かにするかを考察していきます。
◆ 『DIE WITH ZERO』とは何か?
『DIE WITH ZERO』は、ウォール街で成功を収めた投資家ビル・パーキンスが書いた、人生を最大限に豊かに生きるための指南書です。
彼が伝えたいのは、「稼いだお金をいつ、どのように使うかが重要だ」ということ。人生の目的は“お金を貯めること”ではなく、“お金を使って豊かな経験を積むこと”にあると説きます。
この本で提示される核心的な問いは以下の通りです。
- 今、この瞬間にしかできない経験を後回しにしていないか?
- 自分の時間や労力を“最大化すべき場所”に使っているか?
- お金をただ「貯める」ことに安心していないか?
これらはそのまま、ビジネスパーソンや経営者にとっても本質的な問いとなります。
◆ ビジネスに応用できる『9つのルール』
1. 今しかできないことに投資せよ
本書では、人生のある時期にしかできない経験を「時間資産」と呼びます。これはビジネスにも当てはまります。
たとえば、若いうちにしか挑戦できない起業や海外事業展開、体力が必要な営業活動などは、今しかできないことかもしれません。「いつかやろう」は、ビジネスでも通用しません。チャンスには“使用期限”があるのです。
2. 経験に投資する
パーキンスは、「思い出は配当を生む」と語ります。これはマーケティングやブランディングにも応用できます。
たとえば、社員旅行や社内イベントにお金をかけることは無駄ではありません。それは「経験への投資」であり、社員のエンゲージメント向上、組織の一体感形成につながります。BtoCでも、「体験」を重視したサービス設計が顧客ロイヤリティを高めます。
3. 健康寿命に合わせてお金を使う
ビジネスで働く時間は有限です。特に経営者やフリーランスの場合、「人生のどこでリタイアするか」は自分で選べます。DIE WITH ZEROでは「健康なうちにお金を使い切るべき」と説かれますが、それはつまり「健康な時間=最大の資産」ということ。
働きすぎて体を壊すのは、もっとも愚かな資産運用です。定期的なバケーションや健康投資は、長期的に見れば最も高いリターンを生むビジネス戦略ともいえます。
◆ 「お金と時間」のマネジメントが、ビジネスの質を決める
多くの人は「お金の使い方」には注意を払いますが、「時間の使い方」には無頓着です。しかし、パーキンスはそれを逆転させます。
「お金は失っても取り戻せるが、時間は戻ってこない。」
これはビジネスでも非常に示唆に富んでいます。たとえば、以下のような問いを自分に投げかけてみてください:
- 無意味な会議に時間を奪われていないか?
- 本質的ではないタスクに忙殺されていないか?
- 本当に重要な「成長のための活動」に時間を割けているか?
これらを整理し、“時間を稼ぐ”ためにお金を使う発想も必要です。たとえば、優秀な外注先に業務を委託したり、移動時間を短縮するための立地選びをしたりといった、「お金で時間を買う」選択が、ビジネスの質を劇的に変える可能性があります。
◆ 「死ぬときに後悔しない仕事」を選ぼう
本書では、死を意識することの重要性も繰り返し語られます。すべての人に平等に訪れる“終わり”を見据えて、人生と仕事を設計することがDIE WITH ZEROの本質です。
これは「ミッションドリブン経営」にも通じます。
- なぜこの事業をやっているのか?
- 自分の仕事は、誰のためになっているのか?
- この仕事は、死ぬときに「やってよかった」と思えるのか?
こうした問いを持ちながらビジネスに向き合うことが、結果的に社員や顧客、社会全体からの信頼を生み、持続可能な経営へとつながっていきます。
◆ 『DIE WITH ZERO』は、「働く意味」を問い直す書
ビジネスの世界では「成功」とは売上や利益で測られがちですが、『DIE WITH ZERO』は、そうした価値観に一石を投じます。
お金はあくまで“手段”であり、目的は「人生を豊かに生きること」です。ビジネスも同じく、社会を良くしたり、人々の人生を変えたりする“手段”です。
この本が教えてくれるのは、次のような「逆転の発想」です。
- お金を残すより、使い切るほうが価値がある
- 資産を築くより、経験を積むほうが豊かになれる
- 働き続けるより、辞め時を見極めるほうが賢い
◆ 終わりに:今日からできる3つのアクション
最後に、『DIE WITH ZERO』の教えをビジネスに活かすために、今すぐできるアクションを3つ提案します。
1. 「時間簿」をつけて、自分の時間の使い道を可視化する
どこに無駄があるのかを明確にし、“価値ある時間”へと投資しなおしましょう。
2. 「いつかやりたい」を今やるスケジュールを立てる
挑戦したい事業、学びたいスキル、行きたい場所──「やりたいけど忙しい」を今やるための第一歩を切りましょう。
3. 「経験に投資する」予算を設定する
単なる節約ではなく、経験・人間関係・学びにお金を使う予算をあらかじめ決めることで、人生のリターンを最大化できます。
◆ 最後に
『DIE WITH ZERO』は、ただの“マネー論”ではありません。これは「生き方」と「働き方」を統合する、新しい人生設計の教科書です。
もしあなたが今、「本当にこのままでいいのか?」と感じているなら、本書のメッセージは間違いなく響くはずです。
働くことの意味、時間とお金の価値、そして後悔のない人生──それらすべてを見つめ直すきっかけとして、『DIE WITH ZERO』は最適な一冊です。
📘 書籍情報
タイトル:DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール
著者:ビル・パーキンス(Bill Perkins)
訳者:児島 修
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2020年9月30日
判型:四六判上製
ページ数:280ページ
ISBN:978-4-478-10968-7
定価:1,870円(税込)
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