■ はじめに:「雑談」は武器になる
「雑談が苦手なんです」
営業職やマネジメント、チームリーダーなど、人と関わる仕事をしている人から、よく聞く言葉です。商談の冒頭、会議前のちょっとした時間、エレベーターでの上司との間…沈黙に気まずさを感じながら「何を話せばいいかわからない」と悩んだ経験、ありませんか?
そんな悩みに優しく、かつ的確に応えてくれるのが、**五百田達成(いおたたつなり)**さんの著書『超雑談力』です。
この本は、「話し上手」になるための本ではありません。「雑談はセンスや才能ではなく、型と意識で誰でも上達する」と説き、「人づきあいがラクになる」ための会話のヒントが満載です。
本記事では、『超雑談力』のエッセンスを、ビジネスシーンに応用する形でわかりやすく紹介します。
■ 雑談=信頼を築くツールである
本書の中で繰り返し強調されているのが、以下の一文です。
「雑談とは、情報のやり取りではなく、“感情”のやり取りである」
たとえば、こんな会話。
- A:「今日は暑いですね」
- B:「本当ですね。外に出るだけで汗が出ましたよ」
このような何気ない会話でも、お互いに「暑いですね」という共通体験や感情を共有することで、小さな共感と信頼が生まれます。
雑談がうまい人というのは、話の面白さではなく、「相手に共感する力」「場の空気を読む力」「ちょっとした一言を加える力」が高い人です。そして、それは訓練で身につけることができます。
■ なぜビジネスに「雑談力」が必要なのか?
現代のビジネスでは、専門知識やスキルだけでなく、**「人間関係力」**がますます重要になっています。どんなに優れた提案でも、信頼関係がなければ受け入れられません。
また、働き方の多様化・リモートワークの浸透により、**「雑談する機会そのものが減っている」**今、あえて意識的に雑談を取り入れることが、チームの雰囲気や仕事のしやすさを左右するようになっています。
雑談は、以下のような場面で大きな力を発揮します:
- 商談・営業前のアイスブレイク
- 社内のチームビルディング
- 部下・後輩との距離感の調整
- 上司との信頼関係づくり
- 顧客との長期的な関係構築
■ 雑談力を上げる5つのビジネステクニック
① 話す内容より「共感」や「感情」を意識する
ビジネス雑談では、「何を話すか」より「どう感じているか」が重要です。
話題に困ったら、まずは目の前の状況に対して一言感情を添えてみましょう。
- ✕「今日、晴れてますね」
- ○「今日は気持ちいいくらい晴れてますね。外に出たくなります」
「晴れている」という情報だけでなく、「気持ちいい」「出たくなる」といった感情が加わることで、共感のきっかけが生まれます。
② 会話は「キャッチボール」ではなく「ラリー」
一問一答になってしまうと会話が途切れてしまいます。会話の目的は情報収集ではなく、**「会話のキャッチボールを続けること」**です。
例えば:
- A:「週末は何してたんですか?」
- B:「買い物に行きました」
- A:「いいですね!最近はどこで買い物されるんですか?」
相手の言葉を受け取り、興味を示し、さらに質問や共感を返す――。このリズムが「ラリー」です。
③ 相手の“こだわり”や“好き”に乗っかる
雑談は「相手を中心に回す」のが鉄則です。人は、自分の好きなことを話すのが大好き。
例えば、相手が「キャンプが趣味」と言ったら、「キャンプって準備も大変ですよね。どんな道具を使ってるんですか?」などと質問を重ねてみましょう。
相手の話を“面白がる姿勢”が何よりも信頼を生みます。
④ 雑談のネタは「自分の小ネタ」を持っておく
会話のきっかけを作るために、自分の「日常のネタ」をいくつかストックしておくのも有効です。
- 最近観たドラマや映画
- 子どもの言動
- 天気や季節の話題
- カフェやランチの話
「ネタがない」と思っても、意外と日常にはたくさんの種が転がっています。
⑤ オンライン時代だからこそ「意図的な雑談」を
リモートワークが主流になった今、雑談の機会は激減しました。会議も業務連絡が終わればすぐ終了…。
だからこそ、**「雑談を意図的に入れる」**ことが大切です。たとえば:
- ミーティング前に1〜2分のフリートーク時間を設ける
- チャットで日常の一言(「今日はアイス日和ですね!」など)を添える
- オンライン飲み会や雑談タイムをつくる
これだけでも、メンバー同士の心理的距離が縮まり、チームの一体感が高まります。
■ 雑談は「スモールトーク」ではなく「スモールトラスト」
五百田氏が本書で強調している言葉に、「スモールトラスト」という概念があります。
それは、「雑談を通じて、相手との小さな信頼を少しずつ積み重ねていくこと」です。
日々の以下のような言葉が、実は大きな信頼の土台を作っています:
- 「最近お忙しそうですね。無理しすぎてませんか?」
- 「先日話されてた案件、どうなりましたか?」
- 「このお菓子、〇〇さんが好きそうだったので買ってきました」
小さな言葉、小さな気遣いの積み重ねが、やがて「この人とは仕事がしやすい」「信頼できる」といった印象を与えていきます。
■ まとめ:「雑談力」は最強のビジネススキル
『超雑談力』は、単なる話し方のテクニック本ではありません。
- 雑談は感情のやり取り
- 雑談は信頼をつくる入り口
- 雑談は仕事をスムーズにする武器
このように、**ビジネスのあらゆる場面に使える“人間関係の潤滑油”**として、非常に重要な役割を果たすものだとわかります。
今日からできることは、ほんの些細なことです。
- あいさつに一言添える
- 会話の中で相手の感情に寄り添う
- 質問を一つ、興味を一つ足してみる
雑談力は、努力より「意識」で変わる力です。
「雑談が得意」と思える日は、決して遠くありません。
📘 書籍情報
タイトル:超雑談力 人づきあいがラクになる 誰とでも信頼関係が築ける
著者:五百田 達成(いおた たつなり)
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2019年12月22日
ページ数:208ページ
ISBN:978-4-7993-2578-0
価格:1,760円(税込)
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