勉強とは「変わること」──『勉強の哲学』に学ぶ、ビジネスパーソンのための学び直しのすすめ

ビジネス

みなさんは「勉強」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?

資格試験? 語学学習? スキルアップ?
あるいは、「時間がなくて勉強できない…」という罪悪感でしょうか。

今回ご紹介する本、千葉雅也さんの**『勉強の哲学 来たるべきバカのために』は、そんな常識的な「勉強」のイメージを完全に壊してくれる一冊です。そしてそれは、今の時代を生きるすべてのビジネスパーソンに必要な「考える力」**を教えてくれます。

この記事では、本書のエッセンスをかみ砕いて紹介しながら、なぜ今「勉強」が必要なのか、そしてそれがビジネスにどう役立つのかを丁寧に解説していきます。


1. 勉強=「変わってしまう」こと

著者・千葉雅也さんは「勉強とは変身である」と断言します。

多くの人は、勉強を「何かを身につけること」と思っています。知識を増やす、技術を覚える、資格を取る…。もちろんそれも一部ですが、本質は違います。

本書のメッセージはこうです。

本当の勉強とは、今の自分を壊し、新しい自分に“変わってしまう”こと。

たとえば、あるビジネスパーソンがキャリアについて考え直したとしましょう。「このままこの会社で働き続けて本当にいいのか?」と疑問を持ったとき、彼は“勉強”のスタート地点に立っているのです。

学ぶという行為は、単なる情報収集ではありません。
「これまでの自分」にしがみつかず、変化を受け入れる姿勢こそが、勉強なのです。


2. 「ノリ」で生きる社会と、その危うさ

千葉さんは現代を「ノリの共同体」と呼びます。

つまり、周囲に合わせて空気を読む、共感を重視する、面白そうなことに乗っかる…そういった行動が求められる社会です。

一見、協調性があって良さそうに思えますよね。
でも、そこには大きな落とし穴があります。

それは、「本当に考えること」が抜け落ちてしまうということ。

例えば、会議で誰かが「こうすべきだ」と言ったとき、空気を読んで意見せずに同調する。
SNSでみんなが褒めている本を、よく考えずに「良かった」とつぶやく。

これは「ノリ」に従っている状態です。
その場はスムーズに進んでも、自分の考えは深まっていきません。

ノリに流されず、「なぜそうなのか?」「本当にそうか?」と問い続けることが勉強。

ビジネスの世界でも、「言われたことをそのままやる人」と「自分の頭で考えて動ける人」とでは、評価も成果も大きく変わります。


3. 勉強がつらいのは「快楽」を失うから

「勉強しなきゃ」と思っても、なかなか続かない。
それには、ちゃんと理由があります。

それは、勉強とは「今までの快楽を捨てる行為」だからです。

たとえば、仕事終わりにYouTubeを観る、スマホをいじる、友達と飲みに行く…。
こういった“気持ちいい時間”を削って、机に向かう必要があります。

さらに、学び始めると、これまで好きだったものがつまらなく感じることすらあります。
自分の価値観が変わってしまうからです。

でも、それこそが「勉強が深まっている証拠」でもあります。

変化には痛みが伴う。でも、それを乗り越えた先にこそ、新しい自分が待っている。

これを知っていれば、「勉強がつらいのは自分がダメだから」ではなく、「誰でもそう感じるプロセスだ」と前向きにとらえることができます。


4. 勉強は「逃げること」でもある

勉強は、ただ前向きな努力ではありません。

ときには、「今の現実から逃げたい」という思いから始まることもあります。

  • 仕事がつまらないから、資格の勉強を始めた
  • 人間関係が息苦しいから、読書に没頭した
  • 将来に不安があるから、オンラインスクールに入った

こういう“逃げ”が、実はすごく大切なのです。

千葉さんは「勉強とは逃走である」と言います。

現実に違和感を感じ、それを突き破るために学ぶ。

その結果、今いる場所から抜け出し、より自由に生きられる自分になっていく。

これはまさに、キャリアの転換や転職、独立にも通じる考え方ですよね。


5. 4つの勉強ステージで考える、自己成長の流れ

本書では、勉強の流れを以下の4ステージで説明しています。

  1. バカになる(自分が間違っていたことを認める)
  2. 違和感を感じる(これまでの快楽が薄れていく)
  3. 逃走する(新しい知識や世界に出会う)
  4. 変身する(新しい快楽を得て、新しい自分になる)

この流れは、ビジネスの現場にもぴったり当てはまります。

たとえば、新規事業にチャレンジするとき、最初は「自分の常識」が通用しません。失敗や迷いも多い。けれど、新しい知識や人との出会いを重ねるうちに、少しずつ考え方が変わってきます。

そしていつしか、「前とは違う自分」になっていることに気づきます。

この「変わる勇気」を持っている人こそが、現代のビジネスで活躍しているのです。


6. 「わかりやすさ」に頼りすぎるな

現代は「わかりやすさ」が重視されすぎている、と著者は警告します。

  • 要約動画で本を読んだ気になる
  • ChatGPTに聞いて、考えた気になる
  • 解説記事だけで満足してしまう

もちろん、こういったツールも便利です。
でも、それだけで思考停止してしまっては意味がありません。

本当に力をつけるには、「わからないこと」としっかり向き合う必要がある。

むしろ、わからない状態こそが成長のチャンスです。

ビジネスでも、正解がない課題に取り組める人こそが評価される時代です。
だからこそ、「考える力」「問いを立てる力」が求められているのです。


7. 来たるべきバカになろう

本書のタイトルにある「来たるべきバカ」という言葉。これは、**“まだ出会っていない新しい自分”**のことです。

勉強とは、今の自分を超えて、新しい自分に出会うための旅。

その旅には勇気が必要です。

  • 空気を読まずに発言する勇気
  • 今の仕事に違和感を持つ勇気
  • 新しいことを学び直す勇気

でも、その一歩を踏み出せた人こそが、自分だけのキャリアを切り開いていきます。


まとめ:勉強とは「問い直すこと」。それがあなたを変える

『勉強の哲学』は、ただの哲学書ではありません。

  • 自分の価値観を揺さぶる
  • ノリに流されずに自分で考える
  • 今の自分を超えていく勇気を持つ

この本が伝えるのは、そんな“生きる姿勢”です。

ビジネスの世界は変化の連続です。
5年前の成功体験が、今は通用しないこともあります。

だからこそ、私たちは学び続ける必要があります。
それは、知識を増やすためではなく、「自分をアップデートするため」です。

勉強とは、変わること。変わるとは、自分を疑い、壊し、作り直すこと。

この記事を読んでくださったあなたが、「来たるべきバカ」になる第一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

📘 書籍情報

  • タイトル:勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版
  • 著者:千葉 雅也
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2020年3月10日
  • ISBN:978-4-16-791463-9
  • ページ数:256ページ
  • 価格:858円(税込)

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