はじめに
「なんで、あの人の話はすぐ通るんだろう?」
「同じことを言っているのに、自分だと伝わらない……」
そんな経験、ビジネスの現場で一度や二度はあるはずです。話し方や伝え方で成果に差が出るのは、もはや“あるある”です。逆にいえば、伝え方を変えるだけで、仕事の成果は劇的に上がるとも言えます。
そんな“伝える力”を鍛えるヒントが詰まっているのが、今回ご紹介する書籍『3秒で伝える コンサルが使う[シンプルな言葉で相手を動かす]会話術』(扶桑社BOOKS)です。
本書は、コンサルタントが実際にクライアントとの会話で駆使している「一瞬で刺す」言葉の技術を紹介しています。言葉の力で人を動かし、プロジェクトを前進させていくその手法は、営業、マネジメント、プレゼン、すべてのビジネスパーソンにとって必読の内容です。
今回は本書の要点を解説しながら、それをビジネスの現場でどう活かすかを掘り下げていきます。
「3秒で伝える」ってどういうこと?
本書の核心は、「人の印象に残るのは、最初の3秒である」という点です。たとえば会議での発言、プレゼンの冒頭、上司への報告……どんな場面でも、出だしの数秒で相手の興味をつかまなければ、言いたいことは届きません。
この「3秒」という時間には、以下のような現実的背景があります。
- 忙しい上司や顧客は、話をじっくり聞く余裕がない
- スマホや通知で集中が分断されやすい
- 結論が見えない話には、人は興味を持ちにくい
つまり、最初に“結論”や“キーワード”を置きにいく必要があるのです。では、どうすれば3秒で伝えられるのでしょうか?
コンサルが実践する「3つの会話術」
① 短く、端的に言う――「無駄を削る」だけで伝わる
たとえば、資料作成を部下に依頼するとき。
✕「このプロジェクトについてまとめてほしいんだけど、できれば今日中に、ポイントを整理して、わかりやすい感じでお願い」
〇「3枚以内で、今日の18時まで。要点は3つに絞って」
この違いは歴然です。前者は曖昧で人によって解釈が違い、成果物にズレが出る可能性が高い。後者は具体的かつシンプルなので、期待するアウトプットが共有できます。
**ビジネスでは「わかりやすい=仕事が早い」**とも言えます。余計な言葉を削ぎ落とすことが、結果的にチーム全体のスピードを上げるのです。
② 抽象より具体で語る――「伝える」から「伝わる」へ
ビジネスでは、よくある「抽象的な指示」に悩まされます。
✕「もっとお客様目線で」
〇「自分がこの広告を見て買いたいと思うか?」
✕「改善しておいて」
〇「メールの件名をもっと短く、読みたくなる工夫をして」
このように、抽象を具体に置き換えるだけで、相手の理解度は格段に上がります。本書では、「体験ベースで語れ」と何度も強調されています。
コンサルが提案を通す際、必ず「具体例」を交えて伝えるのもこのためです。たとえば、業績改善案を提示する際にも、「他社事例」や「数字」を用いてイメージを具体化します。
抽象語は指示にならず、具体語が人を動かす。
この原則を頭に入れておくだけで、会議や報告の質は激変します。
③ 「誰に」「何をしてほしいか」を明確に
指示や依頼がうまく伝わらない原因の多くは、「誰が、何を、いつまでに」やってほしいのかが曖昧だからです。
たとえばチームミーティングでよくある会話。
✕「この件、ちょっと見直してくれる?」(誰に? いつまで?)
〇「田中さん、〇〇の資料を明日の午前中までに修正してください」
このように、主語・目的・期限をはっきり伝えることで、仕事がスムーズに進みます。
特にリモートワークやチャット中心のコミュニケーションでは、「自分が言ったつもり」でも、相手は「何をすべきかわからない」ことが増えます。
コンサルはこのような曖昧さを極度に嫌い、常に**“指示がそのまま行動に変換される”**ことを意識しています。
ビジネスにどう活かすか?シーン別実践例
▶ 営業での「ひと言」は成約率を変える
営業トークでは、「メリットの説明」よりも「短い一言」が効く場面があります。
たとえば……
✕「この商品は高品質でコストパフォーマンスも高く……」
〇「〇〇社も、これで売上が20%上がりました」
相手は商品の細かい説明より、「自分にとって得か損か」で判断しています。だからこそ、一発で価値を感じさせる短い言葉が求められるのです。
▶ マネジメントでは「短く」「明確に」が信頼を生む
リーダーが部下に伝えるとき、くどくど説明するよりも「核心だけ」を伝える方が響きます。
たとえば……
✕「今回はちょっとミスが多くて……気をつけて」
〇「“確認のチェックリスト”、作ろう。それで再発防げる」
指摘ではなく、行動を提案する。しかもそれを一言で言えれば、部下は自分で考え、動き始めます。
▶ プレゼンでは「冒頭3秒」が勝負
プレゼンで重要なのは、最初の一言です。
✕「本日は弊社のサービスについてご紹介いたします」
〇「今日の話、3分聞くだけでコストが20%減ります」
出だしのインパクトで聴衆の“心のドア”が開くかどうかが決まります。コンサルは、クライアントの興味を引くために冒頭の3秒に全精力をかけるといいます。
結論:言葉の「質」を変えるだけで、ビジネスが変わる
『3秒で伝える』が教えてくれるのは、「言葉は、削ぎ落とすことで力を持つ」ということです。
- 説明しすぎない
- 相手がすぐ動けるようにする
- 印象に残る言葉だけを選ぶ
この姿勢は、仕事のスピードを上げるだけでなく、信頼を生む土台にもなります。
情報過多の時代だからこそ、“3秒で刺さる言葉”を持っている人が強い。それは、誰よりも伝える力を持ったプロ=コンサルタントの本質です。
あなたの言葉は、相手の行動を変えていますか?
伝えている「つもり」になっていませんか?
ぜひ本書を手に取り、「伝わる技術」を手に入れてください。
参考文献
タイトル:3秒で伝える コンサルが使う[シンプルな言葉で相手を動かす]会話術
著者:しゅうマナビジネス
出版社:扶桑社
発売日:2023年11月29日
価格:1,650円(税込)
ISBN:978-4-594-09615-1
ページ数:240ページ
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