はじめに:ビジネスは「行動経済学」なしでは語れない時代に
ビジネスの現場では、顧客の心理を読み解く力、上司や部下を動かす力、そして数字では測れない「人の行動原理」が問われる場面が増えています。
たとえば──
- なぜ、同じ値段の商品でも「通常価格1万円→今だけ5000円」と書くだけで売上が跳ね上がるのか?
- なぜ、選択肢が多すぎると逆にお客さんが買わなくなるのか?
- なぜ、人は他人の行動につられて動くのか?
これらの疑問に答えてくれるのが、いま注目されている「行動経済学」です。
今回は、新星出版社から出版されたビジネス入門書
『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学』(監修:阿部誠)
を軸に、行動経済学のエッセンスをビジネスにどう活かせるかという視点で解説します。
第1章:そもそも行動経済学とは?
行動経済学とは、「人間の非合理的な行動パターンを、経済学×心理学の観点で解き明かす学問」です。
従来の経済学が「人は常に合理的で損得に敏感」と想定していたのに対し、
行動経済学は「人は思い込みや感情で判断する」と割り切っている点が大きな違いです。
現代のビジネスは、顧客の感情・行動・選択を深く理解しなければ勝てません。
つまり、行動経済学は**“人を動かすビジネス戦略”**を考えるうえで、必須の教養なのです。
第2章:『サクッとわかる行動経済学』は何が“サクッと”すごいのか?
この本は、とにかく読みやすい。
- 全ページオールカラー
- イラストや図解が豊富
- 実例が日常やビジネスに即していてリアル
- 各章が短くテンポよくまとまっている
本書は、“教養をスキマ時間に学べる”ように設計されたシリーズの一冊で、
ビジネス初心者から中堅まで、誰が読んでも役に立つ内容になっています。
特に印象的なのは、マーケティング、営業、人事、企画など、
あらゆるビジネスシーンに行動経済学を応用できる具体例が盛りだくさんな点。
第3章:ビジネスに効く行動経済学の5つの法則
本書の中でも、特にビジネスに応用しやすい心理トリガー(行動経済学的効果)を5つ紹介します。
① アンカリング効果:最初の印象が全てを決める
人間は最初に目にした数字や情報を“基準”として後の判断をする習性があります。
📈ビジネス活用:
- 「通常価格●円」→「今だけ●円」の価格提示
- 提案資料で最初に“理想”を見せてから“現実的な案”を出す
これだけで、相手の「高い」「安い」の判断基準をコントロールできます。
② 損失回避:人は“損したくない”から動く
人は「得をする」ことより「損をしない」ことを重視します。
これは、経済合理性とは相反する「心理のクセ」です。
📈ビジネス活用:
- 限定キャンペーン:「今だけ割引」
- 商品案内:「在庫が残りわずかです」
- 社内調整:「この施策をやらないと、将来的に機会損失になります」
「得」ではなく「損」を避けたい心理に訴えることで、動機付けが強くなります。
③ 社会的証明:人は他人の行動を真似する
人は「みんながやっていること」に安心感を抱き、それに従いたくなります。
📈ビジネス活用:
- ECサイト:「この商品は累計1万個販売されました」
- サービス案内:「導入実績300社突破」
- 店頭POP:「SNSで話題沸騰中!」
特にデジタルマーケティングでは、“他者の行動”を見せる設計が有効です。
④ フレーミング効果:言い回し次第で印象が変わる
同じ事実でも、「伝え方」ひとつで相手の受け取り方が変わります。
📈ビジネス活用:
- NG:「失敗率10%」 → OK:「成功率90%」
- NG:「この商品は高価格です」 → OK:「高品質ゆえのプレミアム価格」
営業トークや広告文において、「言い回し」は武器です。
⑤ 選択のパラドックス:「選択肢が多い=売れる」は誤解
人は選択肢が多いと判断に迷い、むしろ“買わない”という選択をしてしまうことがあります。
📈ビジネス活用:
- プランは「3つ」までに絞る
- 比較対象は「ベーシック/スタンダード/プレミアム」の3段階で
- 商品ラインナップを明確に差別化
「選ばせるために選択肢を減らす」ことも、重要な戦略です。
第4章:営業、マーケ、人事、すべての部署に効く!
『サクッとわかる行動経済学』を読んで実感したのは、
この学問が「一部のマーケターだけのものではない」ということです。
- 営業なら:クロージングの場面で「損失回避性」を使えば成約率が上がる
- マーケティングなら:「社会的証明」を戦略的に使えばブランド力が高まる
- 人事・マネジメントなら:「フレーミング効果」でメンバーの行動を促すことができる
つまり、人と接するすべての仕事に行動経済学は役立つのです。
第5章:本を読んで終わりにしないために
本書のタイトルに「サクッと」とありますが、その中身は驚くほど実践的です。
でも、読むだけでは意味がありません。
本当に価値が出るのは「行動経済学を使って何をするか?」という行動です。
📌 明日から使えるチェックリスト
- メールや資料で「言い回し」を変えてみる(フレーミング)
- 提案内容を「3つ」に整理して提示してみる(選択のパラドックス)
- プレゼン資料に「他社の導入事例」を入れてみる(社会的証明)
- キャンペーンで「今だけ」「残りわずか」といった言葉を加えてみる(損失回避)
こうした小さな改善が、驚くほど大きな成果を生むかもしれません。
まとめ:知っているだけで一歩差がつく“行動経済学の武器化”
行動経済学は、感情と行動のズレを解き明かす「実戦的な人間理解のツール」です。
『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』は、その入門として最適。
「なんとなく人を動かしていた」状態から、「心理的に確信を持って動かせる」段階へと、
あなたのビジネススキルを一段階引き上げてくれるはずです。
あなたの提案が通らないのは、ロジックが足りないからではない。
相手の“行動のクセ”を読めていないだけかもしれない──。
行動経済学を使って、ビジネスに“納得”と“成果”を引き寄せていきましょう。
📘 書籍情報
書名:サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学
監修者:阿部 誠(東京大学大学院 経済学研究科 教授)
出版社:新星出版社
発売日:2021年3月
ページ数:160ページ(オールカラー)
価格:1,320円(税込)
ISBN:978-4-405-12011-2
サイズ:A5判
対象読者:ビジネスパーソン全般、行動経済学を初めて学ぶ方、マーケター、営業担当者、企画職
コメント