〜『仕事がデキる人のたたき台のキホン』をビジネスに活かす〜
はじめに
ビジネスの現場で、「完璧な資料」や「正解の提案」を追い求めていませんか？一見、素晴らしい成果物を出すことが「仕事がデキる人」の証のように感じられます。しかし、それだけではチームの中で信頼を得たり、成果を最大化したりすることは難しいのが現実です。
本記事では、田中志（たなか のぞみ）さんの著書『仕事がデキる人のたたき台のキホン』の内容をベースに、「たたき台」という考え方がいかにビジネスにおいて重要であるかを掘り下げ、日常業務への具体的な応用方法を紹介します。
「たたき台」とは何か？
「たたき台」とは、完成された提案や資料ではなく、“議論のスタート地点”となる仮の案のことです。一人で完璧を目指すのではなく、あえて荒削りの段階で出すことで、他者の意見を引き出し、よりよい成果物に仕上げるためのきっかけとなるものです。
本書では、「たたき台」をつくるための5つのキホン、「5S」という考え方が紹介されています。
5Sとは？仕事がデキる人が実践する「たたき台」の基本
① スピード：まずは早く出す
どれだけ頭の中でアイデアを練っても、それを形にしなければ価値は生まれません。たたき台の第一歩は、「とにかく早くアウトプットすること」。
初稿は完璧である必要はありません。むしろ、早い段階で出すことで、上司や同僚からフィードバックを得て軌道修正でき、結果として仕事のクオリティもスピードも上がります。
② シンプル：必要な情報だけを提示する
たたき台は、あくまで議論の出発点。情報を盛り込みすぎると、かえって焦点がぼやけてしまいます。伝えたいこと、検討したいことを絞り込むことで、相手に意図が伝わりやすくなり、建設的な議論につながります。
③ 刺激：相手の思考を揺さぶる
たたき台は相手に「考えさせる」ことが目的です。たとえば、あえて少し意外な方向性を提案することで、相手の中に「これは違うな」「もっとこうすべきでは？」という反応が生まれ、会話が活性化します。
④ 質問力：問いを仕込む
提案や資料に「これはどう思いますか？」「他の選択肢はありますか？」といった問いを入れることで、相手が考えるきっかけになります。一方通行の説明ではなく、対話を促す「問いの設計」が、たたき台の質を高める鍵です。
⑤ 隙：あえて完成させすぎない
意見をもらう余白＝「隙」を残すことが、相手の参加意識を引き出します。「ここはまだ未定ですが、どう思いますか？」という姿勢は、上司や同僚に「一緒に考える」余地を与え、チームとしての一体感を醸成します。
「たたき台」のビジネス効果とは？
● 時間の短縮とPDCAの高速化
たたき台を早い段階で提示することで、早期に方向性の確認ができます。無駄な工数や、的外れなやり直しを防げるため、チーム全体の時間効率がアップします。
結果として、PDCA（計画→実行→評価→改善）を高速で回せるようになります。
● チームの知恵を引き出す
一人で考えたアイデアには限界があります。たたき台という「たたかれる前提の案」を出すことで、チームの知恵を集めてブラッシュアップする流れが生まれます。
これは、「心理的安全性」にもつながり、メンバーが積極的に意見を言いやすくなる環境が作られます。
● 自分へのフィードバックが得やすくなる
完璧な資料を出すと、それが正しいかどうかを判断する余地がなくなり、フィードバックを受けにくくなります。
逆に、たたき台は「未完成」であるからこそ、「ここは良い」「ここは直そう」という具体的な意見がもらえ、自分の成長にもつながります。
「たたき台」が苦手な人が陥りやすい3つの思考パターン
① 完璧主義
「完璧な案を出さないといけない」と思うと、手が止まってしまいます。完璧を目指すよりも、「まず出して、直す」方が結果的に質もスピードも高くなります。
② 自己否定
「ダメ出しされたら自分の評価が下がる」と考えるのは誤解です。叩かれているのは“資料”であって、“あなた自身”ではありません。本書でも強調されているように、資料と自分を切り離す視点が大切です。
③ 他人の評価を恐れる
評価を気にするあまり、無難な内容しか出せないと、相手の反応も薄くなり、議論が深まりません。たたき台は「失敗してもいい」前提のアウトプット。恐れずに一歩を踏み出す勇気が成果につながります。
実務で使える「たたき台」活用法
● 会議資料の冒頭に「目的」と「問い」を書く
→ たとえば、「この施策の方向性についてご意見をいただきたい」と明記するだけで、参加者の視点が変わります。
● チャットやメールに未完成の案を添付する
→ 「未完成ですが、方向性を確認させてください」と添えることで、意見を引き出しやすくなります。
● 上司への相談も「たたき台」スタイルで
→ 「このような方向性で考えましたが、アドバイスいただけますか？」と相談すれば、受け手も建設的に反応しやすくなります。
まとめ：たたき台は「成果への第一歩」
たたき台は、「未完成なものを恐れずに出す」ことから始まります。スピード感、シンプルさ、相手の反応を引き出す工夫、そして完成させすぎない“隙”を持たせること。それが結果として、信頼される仕事の進め方につながります。
これからのビジネスは、一人で完璧を目指すより、周囲を巻き込みながら試行錯誤することが成功への近道です。
あなたも今日から、「たたき台」を仕事の武器として使いこなし、「仕事がデキる人」への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか？
📘 基本情報
タイトル：仕事がデキる人のたたき台のキホン
著者：田中 志
出版社：アルク
発売日：2023年7月24日
ページ数：224ページ
ISBN：978‑4‑7574‑3992‑4
価格：約1,600 円＋税（1,760円税込）
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