人を惹きつける話し方が、ビジネスの成果を変える──佐藤政樹著『人を「惹きつける」話し方』を読む

ビジネス

はじめに

「話し方で売上が変わる」「会議での発言がキャリアを左右する」──これらは決して大げさな表現ではありません。ビジネスの世界では、「話す力」がそのまま「成果」に直結します。しかし一方で、プレゼンや商談、会議でうまく話せないと悩むビジネスパーソンは少なくありません。

今回ご紹介するのは、佐藤政樹氏の著書『人を「惹きつける」話し方』です。劇団四季の舞台俳優から営業トップ、そして研修講師へと異色の経歴を持つ著者が、「人の心を動かす話し方」の本質を明らかにしてくれます。

このブログでは、本書の内容をビジネスの現場に落とし込みながら、「なぜ話す力が大事なのか」「どうすれば人を惹きつけられるのか」について深掘りしていきます。


なぜ、話し方がビジネスにおいて重要なのか?

営業、会議、面接、プレゼンテーション──ビジネスのあらゆる場面で求められるのが「話す力」です。ただしここでいう「話す力」とは、滑舌の良さや語彙力といった表面的なスキルではありません。佐藤氏が繰り返し強調するのは、「実感を持って語る力」です。

特にビジネスでは、相手を動かすことがゴールです。製品を買ってもらう、企画を承認してもらう、上司や部下の理解を得る──そのためには、情報を伝えるだけでは不十分。「心を動かす話し方」が不可欠です。


惹きつける話し方の3つの構造「頭・胸・腹」

本書で紹介される非常に印象的なフレームワークが、「頭・胸・腹」という話の構造です。

  • 頭(理性):論理や情報。事実ベースの話。
  • 胸(感情):共感や熱意。聞き手との心のつながりを生む。
  • 腹(本質):なぜそれを語るのか。自分の信念や体験に根差す。

ビジネスにおける多くのプレゼンや会議では「頭」に偏りがちです。数字や実績、根拠を示すだけで「納得させよう」としてしまう。しかし、それだけでは「人の心」は動きません。むしろ「なぜ自分がそれを語るのか」という腹の底からの想いこそが、相手を惹きつける力になります。

つまり、単なる情報伝達ではなく、「自分の体験や信念をもって語ること」がビジネスにおいても必要なのです。


「書く」ことが「話す」準備になる

多くの人は「話す」ことに苦手意識を持っています。しかし著者は、「話す力」は「書く習慣」によって鍛えられると説きます。

ビジネスでも、提案書や報告書、社内ブログなど「書く場面」は多いですが、それを「話すための準備」として活用する視点が重要です。

たとえば、

  • 自分の言いたいことをまず「書いて整理する」
  • 書いた内容を声に出して読み返す
  • 自然な言葉で言い直してみる

このプロセスを通じて、自分の言葉で語れるようになり、実感を込めた話し方ができるようになるのです。

また、毎日の出来事や気づきをブログや日記に書く習慣も、「腹から語る」練習になります。


話し方に自信がない人でも「惹きつける」ことはできる

佐藤氏自身、かつては「人見知りで口下手」だったと語ります。しかし舞台で「セリフを言葉ではなく体験として語る」ことを学び、営業の現場でもその方法を応用したことで、成績が一変したそうです。

この経験から著者は、「誰でも惹きつける話し手になれる」と断言します。ポイントは以下の3つです。

  1. 話す目的を明確にする(なぜ話すのか)
  2. 自分の体験や思いを言葉にする(どんな想いがあるのか)
  3. 自然体で語る(うまく見せようとしない)

このアプローチは、ビジネスのあらゆる場面に応用可能です。たとえば、営業トークでも「自分がこの商品を売る理由」や「お客様にどうなってほしいか」という想いを込めれば、信頼を生みます。会議でも、「数字」や「理屈」だけでなく、「自分の経験からこの施策が必要だと感じている」という語り口は、チームを巻き込む力になります。


惹きつける話し方のビジネス活用法

① プレゼンテーション

多くの人が、スライドの中の情報を「読んで」終わってしまうプレゼン。しかし、惹きつけるプレゼンには「自分の言葉」が欠かせません。

  • なぜこの企画に取り組んだのか
  • 何に悩み、何を学んだのか
  • 聞き手にどんな行動を起こしてほしいのか

こうした「実感」を織り込むことで、数字や図表では伝えきれない「熱量」が伝わります。

② 営業トーク

売り込み感を出さずに顧客の信頼を得るには、「腹で語る」ことが有効です。

  • 「自分もこの商品に助けられた」
  • 「このサービスで救われた人を実際に見た」
  • 「この業界で10年働いてきて、これが一番良いと実感している」

こうした語りは、単なるスペック説明を超え、共感を生みます。

③ マネジメント・1on1

部下とのコミュニケーションでも、「自分の想い」を語る姿勢が信頼関係を深めます。

  • 「自分も新人時代に同じことで悩んでいた」
  • 「このチームにいる理由は〇〇だから」
  • 「ミスは責めない。成長のために振り返ろう」

上司としての“正しさ”ではなく、“人としての想い”が伝わることで、部下も心を開きやすくなります。


結びに──話すことは、自分と向き合うこと

『人を「惹きつける」話し方』は、単なる話し方のマニュアルではありません。むしろ「自分は何を語りたいのか」「何を大切にして生きているのか」を深掘りするための一冊です。

ビジネスの現場では、数字や論理、戦略が重視されがちですが、最終的に人を動かすのは「人の言葉」であり、「人の想い」です。話す力を磨くとは、つまり「自分自身を深く知り、他者に向けて発信する力を持つこと」なのです。

だからこそ、話すことに苦手意識がある人ほど、本書を手に取り、実感を込めて語る力を身につけてほしいと思います。


あなたも今日から「話す力」を鍛えよう

本書に学んだエッセンスを活かし、あなたのビジネスにおける「話す場面」を以下のように見直してみましょう。

  • プレゼン資料を「書く」前に、「なぜ語るのか」を自問する。
  • 朝の1分、昨日の出来事を“書いて”みる。
  • 会議で発言する前に、自分の体験を交えられないか考える。

こうした小さな習慣の積み重ねが、確実に「惹きつける話し手」への第一歩となります。

📘 基本情報

  • タイトル:『人を「惹きつける」話し方 — 口下手でも人見知りでもあがり症でも人生が変わる』
  • 著者:佐藤政樹(さとう・まさき)
  • 出版社:プレジデント社
  • 発売日:2023年3月16日

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